岩手県宮古市、私の故郷です。
宮古に伝わる風習に「松明かし」というものがあります。
本作品はこの”松明かし”の意味・起源・由来を探るドキュメンタリー映像です。



松明かしとは毎年8月1日、7日、13日、14日、15日、16日、20日、31日の夕暮れに、各家庭の玄関前で松を燃やして焚き火をする風習です。8月14日、15日はお墓参りの際、墓前でも行います。多くの民俗学資料を読んだ私は、「松明かしは、災害を機に行われるようになったのではないか?」と考えるようになりました。慶長大津波、明治三陸地震津波、昭和三陸地震津波、アイオン台風、チリ地震津波、そして東日本大震災と宮古は過去、幾度も大災害に襲われてきた場所です。死者の魂が戻るとされるお盆。津波で住処も、命をも奪われた人々の魂はどこへ帰るべきなのでしょう?遺族は被災により住処も変わってしまい、「魂は家を探して迷っているかもしれない」と、連日玄関前で焚き火を行い、魂が帰るべき家を照らし続けたのではないでしょうか?宮古に残る資料は災害によりその多くが失われています。文献を調査するには限界があるため、インタビューによる記録調査を行いました。宮古のお盆には美しさがあります。文書ではなく、映像で残すことが、宮古出身の写真家である私にできることだと考えています。人が人を祀ることの尊さ、命について考える機会となれば幸いです。 

2014年 坂下 清